メンバー著者紹介 服部英二(1973-1994 UNESCO)
京都大学大学院博士課程単取得後、フランス政府給費留学生としてパリ大学(ソルボンヌ)博士課程留学
1973年より、UNESCO勤務、主席広報官・特別文化事業部長等を歴任
主な事業として「シルクロード;対話の道総合調査」、「科学と文化の対話シンポジウムシリーズ」等を発足させ、これらは、2001年の国連による「文明間対話国際年」、ユネスコの「文化の多様性に関する世界宣言」の基盤となった。
退職後も第7代ユネスコ事務局長(F・マイヨール)顧問、第8代事務局長(松浦晃一郎)官房特別参与を務める。
帰国後、麗澤大学大学院教授、国際比較文明学会副会長、日仏教育学会会長、地球システム・倫理学会会長等を歴任。1995年、フランス政府より学術功労章オフィシエ位を授与さる。
著書としては『文明の交差路で考える』(講談社現代新書)以下、2019年『転生する文明』(藤原書店)等多数。他、共著、訳書多数。
2020年10月出版の『地球倫理への旅路』(北海道大学出版会)は、科学と伝統智の乖離への危惧から出発し、SDGsにも結ぶ、世界的な「知」の展開を画いたもの。「あわいの智」の人間存在論に至る。
なお、氏は美術史にも深い造詣を持つ。
著者の文明観
「文明は生き物のように移動する。点と点を結ぶ線上にその生命が流れる。異文化は相互に呼吸し合い、出会い、子を孕む。新しい生命がうまれ、一定の期間、一定の地に花を咲かせる」(『文明は虹の大河』より)というその文明観は、京都大学では西谷啓治教授、パリ大学(ソルボンヌ)ではポール・リクール教授に師事した氏が、ユネスコ勤務中、100ヶ国以上を訪れ、その風土・歴史・遺産に触れ、且つそれらの地の知性と協働しつつ到達した結論であり、現地調査と実践に基づいた認識である。氏はこの文明観に立って、「戦争の文化」に対する「対話の文化」を提唱した。また単なる「共生」にあらずして「共成」、文明の差異を超えた「通底の価値」の探求を呼び掛けている。